中学生の頃、なぜか家に一冊の「現代詩手帖」あった。なんで「なぜか」なんて思わせぶりな書き方をしたかというと、詩を、それも現代詩なんかを読むような人間は、当時家には一人もいなかったはずだからだ。私はといえば、詩の存在を国語の教科書を通してしか知らなかった。
そこに掲載されていた詩の数々は、ケツの青いガキの理解をはるかに超えるものだったが、理解しえずともそのややこしい言葉の群れは、背伸びしたがりの中学生を魅了するのに十分なものだった。
なかでも「辻井喬」という人の詩が気に入って、生徒手帳に書き写し、授業中に眠くなると取り出して読んだりしていた。
あれはどんな詩だったのか、今思い出そうとしてもさっぱり出て来ない。はるか忘却の彼方だ。
やがて高校に入り、現代詩手帖をときおり小遣いで買うようになると、「辻井喬」が西武デパート(当時まだセゾングループという名称はなかった)を経営する「堤清二」だと知り、けっこうなショックを受けた。
大学に入ると、「おいしい生活」のコピーがやや傾き加減のウディ・アレンとともに、そこら中で見受けられるようになり、「セゾン」は”80年代”を象徴する存在になった。WAVEでクロノス・カルテットのCDを買い、セゾン美術館でスタシス・エイドリゲヴィチウスの存在を知り、シネセゾンで『浜辺のアインシュタイン』のメイキングを見、パルコ劇場で「文殊の知恵熱」の裏方を手伝い、考えてみればずいぶんとお世話になったものだ。
元セゾングループ代表の堤清二さんが死去
http://www.47news.jp/FN/201311/FN2013112801001152.html
しかし、個人的にはセゾングループの堤清二ではなく、やはり詩人辻井喬の死を悼むことにしたい。
ご冥福をお祈り致します。
辻井喬全詩集
0 件のコメント:
コメントを投稿