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御主人の呼んだ当人がその場に居ない時は誰も返事などせぬこと。お代りを勤めたりしていてはきりがない。呼ばれた当人が呼ばれた時に来ればそれで十分と御主人自身認めている。
あやまちをしたら、仏頂面で横柄にかまえ、自分の方こそ被害者だという態度を見せてやる。怒ってる主人の方から、直きに、折れて来る。
仲間の者に不埒な所行があるのを知ってても御主人には黙っていること、おしゃべりと思われてはいけないから。
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スウィフト
『奴婢訓
』Directions to Servants
の冒頭部分である。
へー、十八世紀の召使いって、こんな感じだったんだー。扱う貴族の方も結構大変だったろうなー、とテレビのコメンテーターならその程度の感想でお茶を濁しといてもいいかもしれないけど、社会人ともなればだいたいの人が「ん?こういうやつ、今でもいるよな。えーと、ほら、あいつあいつ……」と具体的に思い出したりすることができるはずだ。
「あいつ」とは誰か?
官僚だよねー。ずばりそのもの。
超天才スウィフトの筆は、「主人にお仕えするもの」の性質を克明に描くことで、官僚たちの生態をするどくえぐり出してみせている。さすが。
つまりは、官僚たちの持つ傲慢さってのは、多分に「エリート意識」なんて美名で粉飾されているけど、本当は「奴隷根性」でしかないわけだ。ゴミの山を「夢の島」と呼んだようなもんか。
前回でも少しふれたけど、 奴隷というものは弱者に容赦がない。目が見えない足が動かない病気が治らない、などというものは即座に切り捨てる。それが奴隷の倫理であり、思想であり、精神なのだ。それをまるで「真理」のごとく垂れ流す連中は、「自己奴隷化」してると言える。
ツイッターで暴言の復興庁キャリア官僚
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130623/crm13062312010000-n1.htm
ブログでの暴言がバレた経産省官僚
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130926-00000006-asahi-soci
もともと「公僕」なんだから、そうなるのもしゃーないとも思えるが、なんか最近そういう奴隷根性をふりかざして、御託をたれる連中がよく目につくもんだから、つまらんストレスがかさんでしょうがないんよ。
「度し難きは主が留守の召使い」てなもんで、「主人」がいないと奴隷というものはひどく傲慢になる。なるだけでなく傲慢が美徳であるかのように振る舞う。
官僚がなんとしても守りたいヒミツ、いわば『どれいのヒミツ』は、「御主人様は不在」ということだ。そうすればどんどん傲慢になれる。際限なく貪欲になれる。そんな『どれいのヒミツ」を守るため、現在準備されてるのが「秘密保護法」ってやつなわけ。
「御主人様は不在」なんて文学っぽい表現じゃ上手く伝わらないかも知れないけど、ようするに「国民のことなんか知ったこっちゃない」という「本音」だね。
秘密保護法案:検討過程「真っ黒塗り」
http://mainichi.jp/select/news/20131003k0000m040141000c.html
さて、ここでちょっと民主党政権の「功績」についてお話ししておこう。
「民主党」と聞くだけで、冷蔵庫の中でゴキブリの死骸を見つけたみたいな顔になる人もいるようだけど、まあ聞いて欲しい。
「復興予算の流用」が問題になったことは、ついこないだのことだからほとんどの人が憶えているだろう。この「流用」だが、実は「行政事業レビュー」という、民主党が始めた情報公開によって明らかになったのだ。これがなかったら、内部告発でもない限り、問題とされなかった可能性が高い。
復興予算流用 透明化したから失態見えた
http://www.asahi.com/news/intro/TKY201211020556.html
民主党自身はこんなことのために制度を作ったのではなかったかも知れないが、結果的によい形になった。自分の首も絞めたけどね。このように政権が自分で自分の首を絞めるというのは、とてもすばらしい功績であると言える。あ、皮肉じゃなくて。
せっかくこうして民主党が情報公開したのに、それを「秘密保護法」でまた隠そうとしている。「隠すのは安全保障に関わる重要機密だけでうんぬん」という言い訳なんか、上記の復興予算の使い方を見れば信用できないのは自明だ。なんとでもこじつけるんだから。
『奴婢訓』は未完のままで終った。スウィフトが精神病院に入ったからだ。その病院はスウィフト自身が立てたものだった。スウィフトは病院を建てるとき、このように宣言した。「これからのイギリス人に必要なのはこれだ」……なるほど、確かに。
「ヒミツ」が保護されることで、官僚は自己奴隷化をおしすすめ、それを国民すべてに及ぼそうとするだろう。いや、すでにけっこう及ぼしてる感じもするけど。
すんません、次回もうちょっとだけ続けさせて。
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