さて、アリストテレスには、哲学者らしからぬ逸話(?)が残っています。
アリストテレスはアレキサンダー大王の教師だったんですが、教え子のアレキサンダーがカンパスペという女に夢中になってしまったので、「女なんぞに入れあげるとは何事か」と叱りつけました。
それを耳にしたカンパスペ、アリストテレスのもとへと行きまして、 うっふんあっはんとしなをつくるってえと、さしもの大哲学者もたちまちめろめろになっちまったんですね。
そして、「アタシといいことしたかったら、おんまさんごっこしてちょうだい、おじいちゃん」とか
なんとか言われまして、アリストテレスはカンパスペの言うがまま、四つん這いになってくつわまではめられて、部屋の中をはいしどうどうと鞭打たれつつ這い回った、とのこと。
えー、ルネサンス期に流布した作り話です。話の細部は本によって異なりますが、だいたいこんなようなストーリーです。もちろんアリストテレスの正統な伝記にこのような話はありませんし、アレキサンダー大王の伝記にも「カンパスペ」なる女性は登場しません。
ウィリアム・ブレイク作 |
むしろ興味深いのは、「古代ギリシャばんざーい!!」なルネサンス期において、なぜこのようなお話が広く流布しただけでなく、それをモチーフとした数多の絵画や装身具、置物などが創られたのかってことですね。
レオナルド・ダ・ヴィンチ作 |
後世において、カンパスペはフィリスという名の高級娼婦に差し替えられます。元々はアリストテレスとキリスト教を融合させたトマス・アクィナスを揶揄する意図があったとされますが、ルネサンス期に至ってまで続いたのはどういう意図があったのか、ちょっとわかんないですね。
そして、この構図を見ると、とある超有名な写真が思い出されます。
はい、ニーチェの写真ですね。右端がニーチェ、中央はニーチェの友人パウル・レー、そして二人の背後でむちを振るってるのがルー・ザロメです。
ニーチェは『ツァラトゥストラ』において、「女のもとへ行くのか、では鞭を持って行け」なんて書いてるくせに、めろめろだったザロメとはこんな写真を撮っていたのです。
なんだか、アリストテレスと話の構図が似てますね。
ちなみにニーチェはさんざっぱらプラトンを批判しましたが、アリストテレスについてはあんまり言及していません。
いやまったく、哲学者にとって女は鬼門のようであります。
カテゴリー論命題論(新版 アリストテレス全集 第1巻)
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