2015年2月8日日曜日

【どっこいローマは滅ばなかった編】もしも西荻窪の古本屋がピケティの『21世紀の資本』(PIKETTY,T.-Capital in the Twenty-First Century)を読んだら

娯楽と癒しからみた
古代ローマ繁栄史
―パンとサーカスの時代
「パンとサーカス」といえばローマの繁栄の象徴というか、ローマ人って毎日遊んで暮らせたんだね、みたいな印象で語られることが多い。
 でもこれって、土地を失った小農家の連中がぶらぶらしてて、あぶなかしくってしゃーないんもんだから、大人しくさせるためにやってたようなもんなんだよね。
 こういう「土地からあぶれてぶらぶらしてる連中」てのを「プロレタリア」と呼ぶ。

 そして、古代のプロレタリアと近代のプロレタリアの違いは、古代においては消費のみをこととしたのに対し、近代は労働によって生産するようになったことだ。
古代社会経済史―
古代農業事情 (1959年)
    ここら辺のことはマックス・ヴェーバーが『古代社会経済史(古代農業事情 ) 』で分類してる。なんかマルクスのおかげで、プロレタリア=「労働」者みたいに思われるけど、実際は無産者というか、あぶれもんみたいなもんなのだ。マルクスだってそういう意味で使ってる。ヴェーバーはよくアンチ唯物論というか、マルクスの対抗馬みたいに言われるけど、古代社会の経済分析については、この二人はかなり似通っている。ちなみに、ヴェーバーは社会学を確立する以前は、経済史学を研究してた。

 まずここまで、ローマ市民軍はほぼ農民によって形成されてきた。しかし、その農民が没落し、軍が弱体化して当てにならなくなると、富裕層は私兵を蓄えるようになる。
 ガイウス・マリウスによる軍制改革はいろいろあるが、混乱したローマに一番の効果をもたらしたのは、たとえあぶれもんでも戦争で手柄を立てたら、褒美に土地を与えたことである。
 そして土地を与えられた元あぶれもんの軍人は、その財産を子孫に受け継がせるため、軍人という職業を世襲化したのだった。
 ……えーっと、なんかどっかで聞いたような……
 そう、平安時代末期、土地を失った流民が刀ぶら下げてサムライを名乗り、エラい人に雇われて戦に行って手柄を立てて一国一城の主に、というお話と似ている。
 カエサルがつき、アントニウスがこねしローマ餅、長者princepusとなって喰うはアウグストゥス?
 かくしてローマは、戦国時代ならぬ「内乱の一世紀」を経て、「ローマ帝国」となった。

 さて、ではローマ帝国は格差の問題をどう処理したか。
 ローマは富裕な世襲化した軍人が力を持つこととなった。彼らがどのように帝国を維持したかというと、周辺へとどんどこどんどんと支配を拡げることによってである。
 農業なんかはそれによって供給される奴隷によって成り立っていた。
 周辺国にしたらいい迷惑で、いっぺん死んだはずのやつが蘇ってきたらゾンビと化していて、周りの人間をばくばく喰らい出したようなものである。
 言ってみりゃ、ローマ帝国は周りを侵略し続けることで、問題を先送りしたのだ。
 そしてそれは、ハドリアヌス帝のときに破綻を来すこととなる。

 すんません、ここからまた次回に。
 

Capital in the Twenty-First Century  

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