写真というものが登場した時、それは芸術に対して大きな影響を持った。
ナダールが撮影したクールベ |
画家のギュスターヴ・クールベも、ある日パトロンで友人のアルフレッド・ブリヤAlfred Bruyasにこんな手紙を送っている。
「ちょっと絵の題材に使いたいから、女のヌード写真送ってくんない?」
『画家のアトリエ』(部分) |
そしてパリ万博において世界最初の「個展」を開き、そこでばらまいた作品目録の始めに「レアリスム宣言manifeste du Réalisme」を書きつけた。
曰く、
…………
リアリストってのは、一八三〇年の画家たちがロマン主義と呼ばれたみたくして、オレに付けられた呼び名だ。そういう呼び名ってのは適当につけられる。つけられなきゃ作品は全然お呼びじゃなくなっちまう。
有名になることも悪名を轟かすことものぞんじゃいない、オレはただ、わかってほしいんだ。誤解のない、単純でわかりやすい言葉で自分を語りたいんだ。
古典だろうがモダンだろうが、そこから芸術を学ぼうとは思わない。固定観念や偏見は捨ててしまおう。他の何かからの物まねなんかしたくないし、ましてや「ためにする芸術」なんかに心を傾けたくはない。そう、オレはただただ描きたいだけなんだ。まったく伝統によらず、理性と個性でもって自分を練り上げたいんだ。
やるべきことはわかってる。同時代の慣習や考えを、自分なりに、絵で表現すればいい。画家である以前に、一人の人間として。つまりは、生きた芸術art vivantを造ることだ。
…………
なんだか生硬な訳ですんません。まあとにかく、物まねなんかやーだよ、といいつつ、クールベは写真から模写してたってわけ。
海景 |
この当時写真はバリバリのニューメディアであり、それは「現実」つまり「リアル」を切り取ったものであって、芸術でも何でもないと思われていた。
だからそれは「現実」に対して、より「リアル」な視線をもたらしてくれるツールとしてしか、クールベは、そして同時代の画家たちも、考えていなかったのだろう。
では、写真がもたらした「リアル」とは、どのようなものだったのだろうか。
明日に続きます。ごめんなさい。
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