カテゴリー論 命題論 (新版 アリストテレス全集 第1巻)
「尻は貧者の小さな金鉱である」
アリストテレスは『人生論』の中でそう語っている。
男であれ女であれ、貧しきものは自らの尻を使って生きるよすがとせよ、と……
……なわきゃーない。アリストテレスの著作だけでなく関連文献をひっくり返しても、そんな言葉は出てこない。だいたいアリストテレスの『人生論』て何よ。ところがこれ、アリストテレスのセリフとしてフランスでは十九世紀くらいまで流通していたらしい。
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モリエール全集〈4〉
そしてモリエールの一幕喜劇『強制結婚』では、哲学博士のパンクラスがこういう。
「帽子の『形』ではなく『すがた』というべきですな」
それはアリストテレスの『カテゴリー論』第八章『性質について』によるという。
なるほど。形相(エイドス)の問題は重要だ。アリストテレスがプラトンと鋭く対立したのもこの問題がからんでいる。プラトンのイデアとアリストテレスのエイドスは、もともと同じ語源のエイデイン(ギリシア語で『見る』)から来ているが、アリストテレスはイデアのように外にあるものとせず、その本質として形相(エイドス)を説いたのだったっけ。ふむふむ。
が、しかし、『カテゴリー論』にそのような話は出てこないのだった……
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ハンナ・アーレントは名著『人間の条件』の中でこう書いている。
…………
アリストテレスの有名な言葉に次のようなものがある。
「人間事象を考えるとき……人間をあるがままに考えてはならず、死すべきもののうちでもとくに死すべきものと考えてはならない。それが不死化する可能性において[のみ]考えよ」
…………
アーレントは註釈において『ニコマコス倫理学』からの引用としている。
しかし、『ニコマコス倫理学』にこのような記述はなかったりする。
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……これってもしかして、ハイデガーがウソを教えたんじゃないかなあ……。吉田戦車『甘えんじゃねえよ!』のみっちゃんのママみたく。あのおっさんならやりかねん。若い頃のアーレントは、ハイデガーを盲信してたからね。
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とまあ、言ってないことまで言ったことにされちゃってるアリストテレス大先生だが、アレクサンダー大王の愛人とおんまさんごっこした、なんて濡れ衣に比べれば大したことはないのかも知れない。
こういうのも「有名税」っていうんだろうか?
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