2014年2月28日金曜日

本を破るということは

 本というのはちょくちょく破れているものだが、ほとんどの場合帯かカバーであって、中味が破れているというのはあまりない。しかも意図的に破りとられている、というのはほぼ記憶にない。だいたい本を破るということは、その本を見たくない、見られたくないということなので、古本屋に持ち込むわけがない。
 しかも本を焚くのとは違い、欠損した本が後に残る。残った本の破れた痕跡を見れば、何ものかがその本に対して強烈な嫌悪感を抱いている、というメッセージが伝わるわけだ。
 本を公的に毀損するのに「焚書」という行為はよく知られているが、破って回るというのはちょっと聞いたことがなかった。
アンネの日記 (文春文庫)

 でまあ、ここ最近図書館の『アンネの日記』を破って回ってるやつがいる、ということが問題になっている。
Japan: Anne Frank Books Vandalized
http://world.time.com/2014/02/27/anne-frank-japan-diary-vandalized/

 日本国内よりもヨーロッパの方が敏感に反応していて、上掲の記事では、先日特攻隊員の手紙を世界記憶遺産に申請したことを絡めて分析している。それがBBCなどから批判を受けたので、腹いせにすでに登録済みの『アンネの日記』を狙ったのではないか、という推理だ。ワトソン君、それはどうかな。
 特攻隊の手紙についてはかなりの無理筋と言うか、じゃあアルカイダの自爆テロはどうすんだって話で。テロと特攻をいっしょにすんな、て人もいるだろうけど、日本の著名な哲学者がいっしょにしてるからね。その哲学者とは先般NHK経営委員に就任あそばされた長谷川三千子先生であります。なんという自爆。

正義の喪失 反時代的考察 (PHP文庫)

 きりがないんでホームズごっこはこの辺で。
 あと、なんか「図書館に監視カメラつけろ」とかいう人もいるようだが、読書の自由は基本的人権として認められているので、誰がどんな本を読んでいるかってのを第三者に監視させるのは、たとえどんな理由があろうとやっちゃいけないことなんだよ。
  古本屋も誰からどんな本を買ったのか、てのはよっぽどのことがないかぎりしゃべっちゃいけないことになっている。そういうのと同じ。だからみんな安心して古本屋にエロ本を売れるんだ。ウチは買わないけど。
 そうした「内心の自由」を守ることが犯人を助けているとしても、そこをねじったりしたら、それこそ犯人の思惑にはまることになると思うんだが……どうかな、ワトソン君。


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