「インフレでもリフレでもとにかく貿易上から見た日本は今世界で一番好状態にある、そうじゃ、輸出入とも膨張しているし数字的に見ても世界一じゃ」
「こんな事は初めてじゃないですか」
「うん、然(しか)し日本許(ばか)りが景気いいというよりも他国が萎縮しているんじゃな」
「この調子で果たしていいものでしょうか?」
「人類の幸福から見たら、それあ、よくないよ、然し日本人は偉いな、支那方面の輸出先が駄目になったら南洋方面に新たに販路を開拓したじゃないか」
…………
上記は昭和八年一月一日、東京朝日に掲載されたダルマ蔵相こと高橋是清に対するインタビュー。(毎度のことながら、仮名遣い等は改めてあります)
高橋是清 |
別件を調べているうち、だるまさんのリフレ関係の記事がチラチラ目に入って来たんだが……
インフレと言いつつ、卸ほどに小売りは上がらず、デフレの影を引きずったまま実質賃金は低下。そのことについては失業率の改善で反論。大企業の業績は好調で株価もあがる。円はずんずん安くなる。
なんだこれ、どっかで見たような風景だな。
富裕層と貧困層の格差はどんどん広がっているにも関わらず、マスコミは口をつぐみ、民衆のフラストレーションはたまっていく。
中でも、東北の「飢饉」について、さーぱっり報道してないんだよね。(調べてたのはこれ)
米価の調整についてやたら法律を出したり引っ込めたりして、それがことごとく後手に回って東北の農家を苦しめた。「豊作飢饉」なんて不条理な状況も出来し、東京行きの列車は売られていく娘たちでいっぱいに。
それなのに葉山の別荘で「日本は今世界で一番好状態にある」とかふかされたら、そら腹も立つわな。二・二六で殺されるわけだ。
さらに上のインタビューの二ヶ月後、三月三日に三陸は大津波に襲われる。
以前本宅で書いたエントリー『棚の下で待っているとぼたもちは落ちてこない』の復習みたいになったけど、今のひょーろんか先生方って、是清について「リフレのお手本」みたく語ったりするけど、その失敗については全力で眼を背けてるよね。同じ轍を思いっきり踏んでるように見えるんだけど。でも、まだまだ踏み足りないみたいな……
高橋是清と井上準之助―インフレか、デフレか (文春新書)
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