2013年12月20日金曜日

滅びをさけるための方法 つづきのつづき

 前回でブッダが弟子たちにくどくど申し付けたことについて、「反組織の法」と書いたけど、どこらへんがどう反組織なのかは触れなかった。いや、触れるとすごい長くなるんで。
 でもまったく何も言わないのも不誠実なので、さわりのとこだけ書いておこう。

>社交を喜ばす、社交を楽しまず、好んで社交に耽らないように

 とブッダは言う。これ、ぶっちゃけるとお互いべたべた仲良くすんな、てこと。
 でも組織って、互いに仲良くしないとやってけなかったりする。するんだけど、仲良くするってことは、所謂派閥主義につながり、組織そのものを腐敗させてしまうことになる。
 組織の腐敗ってのはいろいろパターンがあるけど、派閥によって腐敗する場合、組織の本来の目標より派閥の利益を優先させるようになってしまう、というのがひとつある。

 どうせだからわかりやすく、旧帝国陸海軍の事例でも見てみよう。
  大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫) 
 だいたいにおいて陸軍と海軍は仲が悪く、どのくらい悪いかというと、お互いの情報をさーっぱり、ぜーんぜん、まーったく、共有しないくらい悪かった。幼児がおもちゃを独り占めするようなものか。
 そのため、陸軍と海軍が何の連絡もなく、勝手に戦果を発表していた。だから当然、都合の悪いことは黙ってた。ミッドウェーでぼろ負けしたことについて、陸軍の情報部はその実情を海外のニュースから得るしかなかった。
 じゃあ、陸軍と海軍それぞれは一つにまとまっていたかというと、さにあらず。師団同士、連隊同士の仲が悪いことなんかは常態で、徳川夢声も「これから戦争だというのにそんなことで大丈夫なのか」と日記に書いている。

夢声戦争日記 抄―敗戦の記 (中公文庫)

 栄えある大本営陸軍部においても、情報部と作戦課が共同して立案したことは「一度も」なかったという。情報部は情報を収集してまとめて戦況を分析したが、作戦課がそれに耳を貸すことはなく、手前勝手な情報と状況判断のもとに作戦を立てていた。
 「戦争に勝つ」という共通の目的があっても御覧の有様である。

 とにかく、陸軍も海軍も自分たちに都合の悪い情報は「機密」として秘匿し、互いに共有されるのは威勢が良く景気の良い「お話」ばかりになったのだった。
 組織として、その目的が切実であればあるほど、こうした派閥主義的な腐敗が起こりやすくなるので、 それに対して常にチェックを怠らないようにするのがトップの役割なのだが、残念ながら大本営はその自覚が「一かけらも」なかった。それどこころか、そんなまっとうなことを考えるやつは、最前線に吹っ飛ばされて元々いなかったことにされた。

 最近のヒミツ保護法なんてのも、運用されれば上記のような傾向に拍車をかけることになるだろう。
 暴かれたら国家が揺らぐような秘密なんて、そうそうころがってるもんじゃない。
 主に隠されるのは、暴かれたら「小っ恥ずかしい 」「懐が痛む」たぐいのものだ。そしてそういうものを身内で隠すようにすると、ろくでもないヒミツを共有する「派閥」ができあがり、組織はその本来の目的を見失って行く。
 自分で自分の首を絞めてるだけならほっときゃいいけど、官僚とか軍人(おっと、軍人も官僚だっけ)の腐敗は一般庶民を巻き込むからね。

 ついでなんで、ちょっと豆知識。
 朝のドラマなんかで戦時中のエピソードがあると、かならず登場するのが「千人針」というやつだ。一枚の布にひと針づつ、できるだけ多くの女性に縫い付けてもらうもので、これを巻いてれば弾に当たらないという、かなわずとも願わずにいられない庶民の祈りがこもっている。でもこれ、実際には前線ではほとんど棄てられてしまったそうだ。
 なんでかというと、シラミの巣になったから。
 縫い目の部分が、シラミの産卵に最適だったんだそうだ。
 ドラマ等で千人針の描写があるたび、このことを思い出してしまう。困ったもんだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿