2016年6月18日土曜日

「全て集めてある」から「全集」なんてことは全然ない

「全集」と銘打つからには細大漏らさず少年時代の落書きまで収録すべきだ、とまで編執じみたことは言いたがる人も多いんですが、割と間違いやミスが多いのもまた「全集」というものなんです。



 ほぼ最初に出た文学全集と言っていい「漱石全集」からして、初版が誤字脱字だらけで、版を重ねてもなかなか全部は直りませんでした。

 あと記憶にあるところでは、野間宏全集なんかも長編が一つ、未完ではありましたがすっぽ抜けてました。他の未完の小説は収録されていたので、全くのミスかなんらかの事情があったのでしょう。
「なんらかの事情」というのもアレですが、出版社同士の権利関係とか、へんてこなごたごたが時折起こるようです。みんな口つぐんじゃうんではっきりわかんないんですけどね。

 逆に『定本 柳田國男全集』なんか、初版は同じ論文が六回も重複してのっかっちゃってました。おまけにこの全集、生前の柳田の意見を容れて作ったもんで、柳田が気に入らない未完成な論文、若書きのエッセイの類いは全部省かれてます。別巻五に省かれた分の目録がありますが、それでもまだ足らないくらい。現在は一応ちゃんとした「全集」が編まれてはおります。が、さて、大丈夫なのかどうか、太鼓判を押せる度胸はありません。あ、『定本 柳田國男全集』の初版は先述のような理由でとんでもなく安いので、もし古本屋でむちゃ安い柳田全集のセットを見かけたら奥付をチェックして下さい。


夏目漱石全集(全10巻セット) (ちくま文庫)
柳田国男全集 全32巻セット

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