自己愛な人たち (講談社現代新書) |
春日武彦氏によると、統合失調症患者というのは格言の類いが大好きなんだそうだ。
さもありなん。ゲーテなんか一行も読んでなくても、「ゲーテは言った」とやれば手軽に自分がステップアップできるからだ。なんとなく「かんたんらくらくダイエット!」とか「聞き流してるだけで英語がペラペラに!」てのと似ている。
狂人と天才の共通点は、地道な努力ってやつから遠ざかっている、というところだ。
こういう共通点は、紙一重の「紙」なんだろう。
何も努力しなくても「かっこいい」人間になりたいという恥ずかしい欲望は、人間誰しも抱えながら表に出さないようにしている。それを隠さないのが狂人と天才で、ほとんどの場合が失敗して狂人になる、といったところか?
いや、天才を妄想するものが狂人となるのだろう。
天才にとって、千斤の努力も紙に等しい重さなのだ。だから凡人には成しがたい努力を軽々とこなしてみせる。それに対して、狂人は紙ほどの努力に千斤の重みを与えようとする。だから凡人に対してむやみにエラそうにする。
こうしてみると、間をへだてる「紙」は、およそ破られがたいものだと感じられる。
さて、ここでニーチェの格言(笑)
人はまれにしか狂気を得ないが、集団とか党とか民族とか時代とかにはよくあることだ。
(『善悪の彼岸』より)
ニーチェが晩年発狂したことを思うと、なかなか味わい深い言葉だ。
なんというか、まあ、地道な外交努力とかやんないで、軍隊を増やしたり核兵器を持ったりすると「かっこいい」よねえ。
他人を信用せず凡庸なものを嘲るのも「かっこいい」ねえ。
権力の尻馬に乗って弱者を虐げるのも「かっこいい」しねえ。
なんかあれこれもっともらしい理屈を付けてるけど、結局「かっこいい」ことがしたいだけなんだよね。なんにも努力せずに。
うーん、ちょっと愚痴っぽくなったんで、この辺で。
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