2015年11月20日金曜日

クリスチャンではないけれど『マタイ受難曲』は何度も何度も何度も何度も何度も聴いている

バッハになりきってるレオンハルト

 グスタフ・レオンハルトの訃報を聞いてから早三年がすぎ、そろそろ四年になる。
バッハ:マタイ受難曲(全曲)
 彼の指揮した『マタイ受難曲』は、イエスが死んでゆくことの悲しみと、その復活への願いに満ちている。
 『マタイ受難曲』のCDは数種類所有しているが、その中で一番「キリスト教」的な演奏と言えるだろう。宗教というものが、非合理的で非理性的で、ただ信ずるものだということが、何の曲折もなく伝わってくる。
 アーノンクールが指揮したのも大好きだが、こちらはどちらかというと「イエス・キリスト殺人事件」という感じで、演奏が血なまぐさい。磔にされたイエスが果たして蘇るのか、心配になるくらいだ。
 逆にショルティが指揮したのだと、すでにイエスは不死身の肉体を持っていて、人間が槍で突いたくらいじゃ殺せそうにない。人間を超越した何か的なものが感じられる。聖書と言うより、神話的。
 ガーディナー指揮は、なんだかイエスがあまり苦しそうに思えない。大昔の話を淡々とつづっているようだ。ヘレベッへ指揮も同じく。しかし、こうした「近代的」な演奏の方が、最近は受けがいいようだ。
 定番中の定番リヒター指揮は、フィッシャー=ディースカウが完璧!教会堂の雰囲気がお好きな方は、やはりこれがおススメだろう。
 小沢征爾指揮のは色彩豊かで、モノクロ映画がいきなりカラー化されてリバイバルしたように感じる。
 その反対はメンゲルベルク指揮ので、まっっっ黒け。とにかく暗くて陰鬱な演奏なんだが、これはこれでお好きな方にはたまらないだろう。
 鈴木雅明とバッハ・コレギウム・ジャパンのは、一度生でちゃんと聴きたいなー。

 いろいろ益体もないことを書き連ねてしまったが、『マタイ』を手に取るきっかけにしてもらえればうれしい。感想は私個人のものなので、それほど気にしないで欲しい。というか、この曲ってあんまりとんでもない演奏とかなくって、誰のどれを聴いてもそれなりに楽しめるのだ。演奏できるようになるまで、すごく練習が必要だからかもしれない。一時期忘れられていたのを、ちゃんと音楽会で演奏できるように復活させたメンデルスゾーンに感謝したい。

 冒頭に貼付けたのは、映画『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記
アンナ・マクダレーナ・バッハの年代記
 (公開題「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」) 
[DVD]
のメイキング映像から。バッハを演ずるのは、グスタフ・レオンハルトである。
 弾いてる振りをする俳優と指先を別撮りする、という姑息なことをしなくてすむ、とっても素晴らしい配役だ。

 ところで、家で『マタイ』をかけると、ウチの黒ネコは寝てしまう。それまでニャーニャー騒いでいても、しだいに大人しくなり、クッション上で丸くなってしまうのだ。『マタイ』はネコを眠らせる音楽なのである。
   ちなみに、ゴルトベルクの方だと効き目が今イチだったりする。

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