そのときエッセイストとかいうおねえさんの素朴な疑問として、
「お金持ちが納得して税金を払う何かを考えられないでしょうか?」
というのがあった。
え、そんなん無理やろ、税金払ってえびす顔とか、どこのユートピアの話やねん、とつい関西弁になってしまうが、実は「喜んで税金を払った」事例は昔の日本にある。
明治維新のおかげで形のうえで「四民平等」となったとき、歌舞伎役者たちも「平民」となった。江戸時代はどんだけ人気があって千両役者と呼ばれようとも、身分は最低のそのまた下の河原者でしかなかった。それが曲がりなりにも他と同じ「平民」となり、役所に税金を払うことで立派な国民と認められるということになった。
で、どうしたかというと、歌舞伎役者は立派な羽織袴をあつらえて税務署をおとずれ、ときに落涙し、ときにありがたいありがたいと口上を述べ、税金を納めたのだった。
これ、背景に「財産と差別」という問題が横たわっているけど、今は触れないでおく。
年数が少したって明治二四年、両切り紙巻きタバコ「サンライス」というのが売り出されて評判となった。作ったのは村井吉兵衛という男で、この成功に気を良くして「村井兄弟商会」といのを設立。この会社はアメリカとの合弁で、輸入葉タバコを使った「ヒーロー」を大々的に売り出した。
それに対抗して岩谷松平という男が、「国産葉たばこ」と銘打った「天狗煙草」を売り出した。
天狗煙草は輸入タバコに対して「国産」であり、「国益」のための事業だと言い立てた。
と書いている。
三百万円は、今なら百億円くらいか?
つまり、こんなにたくさんお国のために納税している会社ですよ、と宣伝しているわけだ。(下画像右隅)
今こんなことをしたら、株主総会で「節税して配当に回せ!」と物言う株主様に突き上げられてしまうだろう。
それに対抗して岩谷松平という男が、「国産葉たばこ」と銘打った「天狗煙草」を売り出した。
天狗煙草は輸入タバコに対して「国産」であり、「国益」のための事業だと言い立てた。
その熾烈な宣伝合戦は当時「明治たばこ合戦」と呼ばれた。
その宣伝文句として、
「勿驚税金三百万圓」
(驚くなかれ税金三百万円)
と書いている。
三百万円は、今なら百億円くらいか?
つまり、こんなにたくさんお国のために納税している会社ですよ、と宣伝しているわけだ。(下画像右隅)
今こんなことをしたら、株主総会で「節税して配当に回せ!」と物言う株主様に突き上げられてしまうだろう。
ちなみに、天狗煙草は出版とも関わりがあったりする。岩谷松平の孫が岩谷書店という出版社を立ち上げ、雑誌『宝石』を作ったのだ。
江戸川乱歩が世話人となって、ここから多くの推理作家が飛び立っていった。
乱歩が私財をつぎ込んで支えたので、乱歩が作った雑誌だと思っている人も多いようだ。
てんぐ大将 1 日本煙草王物語 |
0 件のコメント:
コメントを投稿