幼い頃見る夢はどれもモノクロだった。
それは当時当たり前のことで、色付きの夢を見るのは「き○がい」に多い、などと子供向けの学習雑誌(小学館のやつ)に堂々と書かれていたのを憶えている。なので、たまにカラーの夢を見ると、子供心にショックを受けたりもした。
だいたい夢だけではなく、写真も映画もテレビもモノクロだった。
今は、夢を見るとほとんど色がついている。写真も映画もテレビもカラーが普通だ。色付きの夢を見ることが、特殊なことのように言う人もいなくなった。
だが、幼い頃のことが夢に出てくると、それは今でもモノクロのままだ。
遠ざかる記憶は色彩を失うものなのか。
誰もがそうだとは限らないだろうが、過去における「何か」を克明に映そうとするとき、人はそれをモノクロで表すことが多いようだ。
「何か」とは、およそ「罪」に関わる何かである。