もし若返ることができるとしたらいつ頃がいいか、ってのは年寄り同士の定番の話題だ。そういうときに「いや、今が一番良いよ」なんてカッコつけたことを言うと、空気の読めないやつ扱いをされる。
「あの日に帰りたい」なんてのは、その日からやり直せるって前提で、しかも今までの記憶をそのまま持った上でという条件でなければやってらんない。思春期のぐだぐだなんざ、どんなに思い出補正をかけても恥ずかしいことばかりだ。
と・こ・ろ・が、「歴史」というやつは、その補正がばりばりにかかる。ねえ知ってる?ナポレオンがアルプス越えをしたとき、本当はぼろぼろのなりで、ロバに乗っていたんだよ。
とにかく自国の歴史については、常にカッコ良く、常にドラマチックに、思い出すのも恥ずかしいことなんか、ぜーんぶなかったことになっちゃうのだ。それは、その時代を生きていた人がいてすらも起こりうる。
戦時中の日本とて例外ではない。というか、富みに顕著だ。